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同時に「時制」(動詞部分の時間と流れの幅)というものも分かってくる。
そしてwould have +pp「~だったのになあ」以上の重要で難しい連語動詞は、英語にはない、ということが分かる。 だから仮定法は、コトバの微積分学であり、「英語勉強の山」の頂上なのである。
ここで、前の方で約束しておいた「仮定法・現在」についても説明する。 仮定法・現在は、今やほとんど使われない。
したがって、別にことさら学習する必要もない。 もし、使うとすれば。
Long live the Emperor「天皇陛下万歳」のような決まり切った表現であろう。 この例文でliveという動詞にsがつかないで、裸のまま使われている。
このように動詞が裸のまま放り投げてあるような、奇妙な新鮮さを伴って使われている場合を、仮定法・現在と呼ぶのだ、と考えるとよい。 その他に、suggestedproposedto him that he should do it rightnow「私は彼にそれを今すぐするようにと勧めた」という例文が重要だとされている。
ここでsuggestとproposeという動詞は、「提案する」「~してはどうだと勧める」「勧誘する」という意味である。 このように「勧誘」「提案」「要求」「命令」を表す動詞のあとにつづくthat節の中では、shouldが使われるのがふつうであるとされる。
たとえば、ask, decide, insist, order, recommendなどの動詞のあとである。 「~したらいいのに」「~しなさい」「~してはどうたね」という表現には、shouldが似あっている。

shouldはそもそも「shallの過去形」という以上に、もともとがら仮定法の一族なのであり、したがって、誰でも知っている「べきだ」という意味を持っている。 このshouldを「べき」と訳せば済む場合は、それでよい。
ところが。 It is natural that you should say so「君がそのように言うのは当然だね」となって、この場合のshouldは、'it~that~should'という文構成constructionをしているとも言われるし、また「当然だ」のnaturalと大変仲がよいので「当然のshould」と呼ばれたりもする。
この場合のshouldは「べき」とは訳さないし、その方が自然である。 shouldは、その他に、大切な使い方をいくつも持っているが、ここでは説明しきれない。
そこで、話を戻すが先ほどのの例文は。 '=I suggested to him that he do itのようにも書かれる。
特にアメリカでは、のshouldは消える。 「勧誘・提案・要求・命令のshould」と呼ばれながら、なおかつ、このshouldは消えるのである。
shouldが消えたあとに裸のままポツンと取り残されてhe do となるこの動詞doが、「仮定法・現在」と呼ばれるものなのである。 なぜ、こういうことが起こるのかと言うと、を「私は彼に、今すぐそれをするように提案した」と訳すより、「私は彼に『なあ、お前さあ、それを、さっさとやったら』と言ったのだ」と訳した方が、より実際の雰囲気に近いからだ。
日本語の「~したらいいだろ」と、まったく同じ語感が、shouldが省略されたあとの原形の動詞(動詞の不定詞形)にはにじみ出ているのである。 仮定法・現在の動詞というのは、このように「~したらいいだろ」の意味だからこそ原形で使われるのである、と考えると、shouldが省略されるのも、なるほどもっともだとなる。
の文は、実は、間接話法の文だとも考えられている。 だから、=l said to him, You should do it right nowと書き直せるのである。

このの「shouldが使われ、そして、省略される現象」の中に仮定「法」が、「法」(mood)、すなわち、ムード(mood,気分)たっぷりの感情的表現であることが明瞭に観察されるのである。 このような日本人にとって一番むずかしい英文法事項が英米人にとっては、日常のごくふつうのコトバつかいである、ということもまた皮肉なことである。
仮定法の文には、よく知られているとおり、もう一つ別の形がある。 それは、「~してほしいなあ」という動詞wishを使った、いわゆる願望表現というやつである。
I wish l were a bird「私が小鳥だったら(正確には「小鳥であるなら」)いいのになあ」恚いう形である。 「~ならいいのになあ」のwishという動詞は、ごくふつうの一般動詞のように見えるが、そうではない。
このwishだけは、一般動詞の中にあって、もともとが闇の世界(虚数の世界)の住民と言うべきか、ヘンなやつなのである。 すなわち、ふつうの動詞の姿をしているくせに、もともとがら仮定法の世界の住民なのである。
ここでは、このwishがどうヘンかということが分がらなければならない。 wishなんか知っているよ、という人に。
では尋ねるが、wishと同じく「希望する、望む」であるhopeはどのように違うのだろうか。 どちらも「希望する」で同じではないか。
同じでしょう。 これで混乱したはずだ。
だから、私の説明のつづきを聞かなければならない。 wishに対してhopeは、実数の世界(直説法)に住んでいる動詞である。

wishが「~ならいいのになあ」であるのに対して、hopeは、ただ単に「~を希望します」と言っているのである。 I hope that you will pass the exam「私はあなたが試験に受かることを希望します」という冷静で落ち着いた文である。
これは誰でも分かる。 that以下の節(名詞節)からあとの方にwillという未来の助動詞が必ずくることに注目しなければならない。
これがwishだと途端に。 l wish (that)you would pass the exam。「あなたが試験に受かるといいのにねえ」となるのだ。
このthatはリズム上、省略される。 ここには、「どうせ、あなたは多分受からないだろうけど」というニュアンスが含まれている。
ここで、willは必ずwouldにならなければならないにこでは、couldでもよい)。 このwouldこそは、例の仮定法。
過去の命とも言うべき法助動詞(modal auxiliary verb については、学校教育では教えないことになっている)のwouldなのである。 「受かるといいのにねえ」なのである。

だから、「受かるといいのにねえ」と言われた相手は本当に合格するだろうか。 いや、この人は、十中八九落ちるのである。
ここが仮定法のミソであった。 実際この人youが合格する可能性は、ほんのわずかしがない。
だから、この「あなたが受かるといいのにねえ」と言われること自体に「多分受からないと思うけど。 あなたには無理なんだよ」という意味合いが強く入っている。
これに対して、hopeの方は、ただ単に「希望します」「あなたが受かることを願います」と言っているだけだから、心理的に複雑な意味合いはない。 ここが、カタギの世界(直説法)と、闇の世界(仮定法)の違いである。

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